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深緑の紙の小箱に深紅の大きめリボン。いつもの私よりちょっと大人っぽいコーディネートね、と我ながら気恥ずかしさに頬が痒くなった。
だって今日は2月14日…。
今日こそ彼に告白するって決めた。
制服のスカートの中に冷たい風が訪れて、旅立った。
眼下を車が走って行く。
「や、やあ…」
いつも彼とは歩道橋で会う。
「やあ、君か。」
振り向いた彼の虚ろげな瞳に胸が高鳴る。
「隣、良い?」
「うん」
ブロロロというエンジンの揺れる音がいくつも架橋の下をくぐり、二人の間の沈黙を忘れさせる。
「あの、ね……」
今日こそ言う。
「私…」
出会ったあの日から、この歩道橋で何も言わず隣に立つだけだったけたど。
「貴方のことがね…」
積もったこの思い、貴方は受け止めてくれるかな。
「…っ、ずっと前から----」
ゴォォオオッ
キキーッ、キキーッ!ドン!
きゃー!?
パッパー!パッパーッ!
今誰かいたぞ!?
誰もいないだろ!
こわ~ いやー
「…………」
歩道橋には私一人。
足の下では赤いランプの車がせわしなく働いている。
隣には誰もいない。
ただ、冷たい風がかわるがわる通り過ぎるだけ。
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