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──…ガシャンッ!!
「誰じゃ!!我(ワレ)にこんな豚飯を作った輩(ヤカラ)は!!」
「お、王子?そんなにお気に召しませんでしたか?」
「気にするもなにも貴様等は我を侮辱しておるかのか!?料理人は一流の奴を雇えと言ったはずじゃ!」
「し、しかし王子…これを作った料理人は城下でも噂の腕利きでして…」
ロラム王国の王宮の食堂に、食器が割れた音と怒鳴り声が交互に響く。
声の主は、食器の半分をしめるほど大きなテーブルの一番手前、豪勢な赤い椅子に足を組んで腰掛けている青年から放たれたものだ。
周りには召し使いらしき人物が青年を見守るように並んでいて、何やら心配そうに眉を寄せているのが伺える。
青年はゆっくりと顔を動かし、頬杖をしながら隣にいた家臣を睨み付けた。
「ほぅ…腕利きだが、我に作るときは手を抜いておると?」
「そ、そんな滅相もありません!王子だからこそ料理人も腕を奮って…」
「その結果がこれじゃろ?」
真っ赤な唇から放たれる怒号は凛と透き通り、食堂全体に響き渡る。
苛立っているのか、白く細い指先でテーブルを叩くと、不意にフォークを握り締めて皿の上の肉に突き立てた。
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