1.異常

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いきなり行き当たりばったりで始めてすまなかった。 少し遅いが自己紹介をしよう。 俺の名前は宮藤修也(くどうしゅうや)。 何でも屋をやってる。 今の状況はさっき話した通り、訳の分からない森に飛ばされた状態だ。 バッテリーが切れている訳でもない。 ざっと見た感じ電子機器を狂わす物もない(というか、妨害電波や磁力程度では壊れないシロモノなんだが)。 空も見えているから衛星だってちゃんと機能しているはず…… 今、何が起こっているんだ? 「まぁ、考えても始まらないか。」 とりあえずは歩き出そう。 川の音も聞こえてるし、何より生きてる。 例え未開の地だったとしても人が居る場所まで辿り着ければなんとかなるはずだ。 ま、川をずっと下って行けばいつかは辿り着くしな。 そうして俺は歩き出す。 「くそ……師匠に怒られちまうな……」 歩きながらそんな事を口にする。 ぶっちゃけ今がどこかなんかより、俺はそっちのが遥かに怖い。 (あそこまで容赦ない人間、世界に百人いるかどうかだしな……) そんな事を考えながら風景を見る。 改めて見ると、何か違和感が感じる。 例えばまずは確か10月だった筈なのに、桜が咲いている。 ……というか、桜か?紫色の桜なんて俺は知らないぞ…… 「綺麗だか不気味だかよくわからん森だな……」 新種とかだったりしたら、笑えるのにな。 学会に発表したら金になるんじゃないか? 「まぁ、どうでもいいか…… っと、見えた。」 歩き始めて数分、森が開けて川が目に映る。 川ってか……湖か? 対岸が全く見えん。 というか……運が良かった。 「なんだ、人間がいるじゃないか。」 遠くだから詳しくは分からないが、人がいる。 赤い髪で……あれは、船か。 女性みたいだし、遊覧船かなにかか? そうして俺は足を運ぶ。 それが、異常の始まりだとも気付かずに。
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