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俺はその人間の下に足を運ぶ。
「Zzz……」
……寝ていらっしゃいますか。
休憩中なのか?
まぁいい。
その寝ている人間は青と白でデザインされた和服を着ており、髪の色は服の色と良く調和がとれているような赤色。
なんつーか、見た目は江戸っ子って感じだ。
性別は見た目からしたら女性で、その……うん、胸がでかいな。
いや、やましい意味はなくただありのままを反芻しただけだから気にしないでくれ。
まぁともかくだ。
見た目としてはかなり綺麗なんだが何より目に留まるのは胸……ではなく。
「あれ……鎌、だよな?」
先端の方が少し歪んでいるが、彼女が枕替わりにしているそれは誰がどう見ても鎌そのものだ。
しかも、パッと見た限り模造品などではなく本物。
武器鑑定をしていたわけではないが、真剣と模造刀の違いくらいなら分かるのでおそらくは正しい筈だ。
「なんで鎌を……?」
起こそうと思ったが、鎌があるのを見て起こすのをためらってしまう。
別の人を探すべきか……
「うー……
しきさまぁー……」
その女性がいきなり寝言らしい言葉を紡ぐ。
なにやらあまり本人にとって良くない夢でも見ているのだろうか、顔が少し申し訳なさそうになった。
「……ま、悪そうな奴じゃないし。」
それに、いざとなれば殺される前に逃げたり押さえつけたりは出来る自信がある。
虎穴に入らずんば虎子を得ず、だったか。
今は状況を把握する事が何よりも重要だ。
そんなわけで、俺は女性を起こす決意をする。
「おい、起きろ。」
まずは軽く肩を叩く。
と、少し嫌そうな顔をするが起きる気配はない。
なので次は肩に手を置き揺すってみる。
ちなみにこの状況で肩と頭以外の選択肢が存在するなら、そいつは変態だと俺は認識する。
……話を戻すか。
「うぅ……
すいません、すいま……Zzz……」
……寝言で謝るくらいなら起きて欲しいんだが。
まぁ、それだけ熟睡しているのだろう。
なら仕方ない……頭を軽く叩くか。
「おーい、起きろー。」
軽く頭を叩く。
すると
「ん……」
一瞬だけ目を開けかけて、結局開けない。
寝てる。
どれだけ寝たいんだこいつは。
「……少し大声でもあげるか。」
こうなったら仕方がない、強攻策だ。
俺は彼女の耳元に口を近づける。
そして……
「起きろーーーーーーーーーーー!!!!!!」
可能な限りの声量で、彼女の耳元で叫んだ。
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