1.異常

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「いくつか腑に落ちないところがある。 いいか?」 「構わないよ。」 俺がそう聞くと随分とあっさりと返事が返ってくる。 ホント江戸チックだな、こいつは。 「まず一つ目。 それを俺に伝えるのにはどんな意図があるんだ。」 俺はまず一番重要な部分から攻めてみる。 そもそも、全て重要だけどな。 「意図ねぇ…… 強いて言うなら、幻想郷を保つためだよ。 後は、困ってたらお互い様だろ。」 そう笑顔で返事をくれる彼女。 よくわからんが、幻想郷に幻想以外が居たらマズいみたいだ。 ……にしても、本当に江戸っ子気質だな。 「そっか……ありがとう。 それじゃ次に二つ目。 流石に幻想にはなってないだろうから帰れるとして、帰るにはどうすればいいんだ。」 これも重要だ。 ただ、話し方からするに帰り方はあるみたいだし最後にしても良かったんだが。 「あー…… それは、博麗神社っていう場所があるんだがそこの巫女に頼めば平気だと思うよ。」 ……巫女、ね。 神さまの力でも使うのかねぇ。 賽銭でもすりゃ帰してくれんのかな。 「よし、博麗神社の巫女だな。 なら、三つ目はそこまでどれくらいかの距離とどこにあるかを教えてほしい。」 「それはあたいの得意分野だね。 ちょっと待っとくれよ……」 得意分野? 片膝をついて、鎌の持つ刃が付属されていない方に額をつけて目を閉じている。 距離を計るのが得意なのか、彼女は。 ……メジャーとかいらないんか? あ……幻想郷とか言ってたしゲーム限定変な能力か。 「直線距離なら二里十九町四十五間だね。」 ……誰か訳してくれ。 「メートル表記じゃないのか?」 「メートルって、なんだい? 」 いつの時代だ。 里とか使ってる奴初めて見たぞ、おい。 しかも当然のように思っているらしく首を傾げてやがる。 つーか聞き返された。 「いや……なんでもない。」 「?」 まぁ確か一里が4kmくらいだったし……直線距離で8kmちょいか。 方向も示してくれたし、そんなに遠くもないみたいだな。 「それじゃ、最後の質問。 平気か?」 「え? あ、あぁいいよ。」 俺にとって今からする質問は彼女が親切に教えてくれた事や、元の世界に戻る事より遥かに重要だ。 それは…… 「ここが今まで俺が居た世界とは全くの別物だって事を証明してくれ。 まだ、幻想郷だっていうそれを理解はしているが信じられる訳がない。」
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