Act1.Fantasy zone

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パソコンの電源を落とし、束の間の暇潰しが出来た所で天井を見上げる。 サジュラグルアの季節は夏。 夜だからと言って、暑くない訳ではない。 うっすらと額に汗が浮かんでいるのを服の裾で拭い、すっくと立ち上がり時計を見る。 『22:41』 良い子はもう寝る時間である。 帝は良い子なのでそそくさと仕事部屋から出、もふもふとしたベッドに歩み寄る。 低反発マットの大きなベッドに半分に折られた夏布団。 帝の疲れを癒す絶好の寝具“しんぐ”である。 コキコキと首の骨を鳴らし、冷房のオフタイマーを設定してからリモコンを近くの机に置き、ぴょんこと布団にダイブする。 そしてそのまま半分に折っていた夏布団を捲り、自分に被せ、もふもふとした感触を楽しみながら目を閉じた。     ▽     △ 閉め忘れたカーテンのお陰で、太陽様直々によるおはよう太陽光が帝の顔を包む。 ぴくぴくと眉が動き、がばりと布団を押しのけ起き上がる。 帝の心地よい目覚めを邪魔する者には天誅“てんちゅう”が下る。 が、相手は万“よろず”の神、太陽なのでそれは不可能であった。 しかし本人の怒りは冷めやらず、天に向かってピッと中指を立て、世界のフィンガー『くたばりやがれ』をする。 それでも怒りは冷めず、むしゃくしゃしながらももそもそと布団から這い出る。 ゴツッ 「――――~~ッ!!」 寝具の近くに置いていた机の足が、何と帝の足の小指にぶつかってきたではないか。 歯を噛み締め、必死に痛みを堪えつつも眩い光を放つ太陽を睨む。 しかし太陽の眩い光を直視する事は自殺行為である。 太陽からの天誅に苛々としつつも台所の戸棚から玄米フレークを取り出し、少し大きめの皿にぱらぱらと入れる。 そして牛乳専用の冷蔵庫から二つ例の牛乳を取り出し、どぼどぼと玄米フレークにかける。 スプーンを口に銜え、両手でしっかりと皿を持ちながらガラスの机に置き、もぐもぐと食べ始める。 ふと、ガラスの机に映っている自分の様子を見て、完全に目が覚める。
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