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何と、髪の毛は所々跳ね、自慢の狼耳がお粗末な事になっているではないか。
皿を置いて慌てて洗面台にへと書け寄り、櫛“くし”で髪の毛をすきながら再び机に戻り、櫛を置いていそいそと食べ始める。
いかに急ぎの用があれど、食べる事は欠かせない。
というより、フレーク系はあまり長時間おきすぎるとふやけて見た目がグロテスクになるからだ。
見た目の補正と言うのは凄く重要である。
■ ■
何とか食べ終え、皿を台所に置いてから櫛で髪の毛と狼耳をすきながら仕事部屋に入り、パソコンの電源を入れる。
デスクトップが表示されても暫くは自分の身だしなみを整える事に集中。
尻尾が思ったより酷くなかったのが救いと言った所か。
手元に置いてある鏡を確認し、何処もおかしくはない事を再確認し、ちらりとモニタを確認する。
『新着メッセージ 二件』
カチカチとタスクトレイにあるメッセンジャーのアイコンをダブルクリックし、ウィンドウに表示。
『例の緑蛸が帝様の寝顔を見てにやついておりましたのでひっとらえておきました。監獄で保管しています』
『その際スティンガーを使用しましたが……よろしかったでしょうか?』
「…………」
なんたる無礼である事か。
こめかみに青筋が入るのを感じながら、ウィンドウを閉じ、パソコンの電源を落とした。
一旦服装を整えてから玄関に向かい、大きな鏡でもう一度容姿におかしい所がないか確認する。
帝の服は寝巻でもあり、普段着でもある。
決して着替えるのが面倒臭いという理由なんかではない。決して。
靴を履いて玄関を開け、緑のカーペットが特徴的な廊下を歩き、エレベータを使用して1Fに降りる。帝が使っているこのマンションの名は『ジャマダハル』
実在する刀剣のような見た目からこの名前がついたと、建設者は語る。
35階立て、VIP専用と言われても過言ではない高額な家賃が設定されてある。
チンッ
軽い音を立てて扉が開き、帝は1Fにへと足を踏み入れる。
直後、ロビーに並んでいた黒い服を来た体格のいい男達が両端にずらりと並び、帝を出迎えた。
男達は帝の命があるまで口を開く事は許されない。
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