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放課後、いつも通り私は下駄箱で靴を履き替えていた。
「なあ、伊坂さん!」
声のした方に目を向けると、そこには見覚えのある赤髪の男の子。
軽音楽部の安田一馬くん。
高校生バンドの中では有名なギタリスト。
ロックが好きなのは、綺麗な赤髪を見たらわかる。
「…なんですか?」
「戻ってこいよ…俺らんとこ」
"戻ってこいよ"
私の心臓は、ドクンと波打った。
私を必要としているの?
でも、怖い。あの孤独感…もう味わいたくない。
私は自ら彼の優しさを無駄にした。
「私は…二度と歌わないの」
安田くんに背を向けて、私は歩き出した。
悲しい表情を見せた彼に気づかない振りをして。
「ごめんなさい…」
一人吐いた呟きは、夕焼けに染まった暁の空に消えていった。
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