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その時、頭上のスピーカーから流れる校内放送。
『小澤先生、小澤先生、
職員室までお戻りください。
小澤先生、小澤先生…』
「…呼んでるよ。」
「うん。」
「なんか怒られるようなことしたの?」
「ははっ。うん、どれだろな。」
すっと離される額。
目の前にくる白衣の襟。
いくつか染みがついて、くたびれている。
「さて、出頭してくるかな。」
片手で、自分の顎の無精髭を撫でる。
…めんどくさいんだな。
それは授業中なんかにも、よく見せる癖。
多分、わたししか気づいていないけど。
「寄り道すんなよ、里中ー。」
肩が脇をすり抜ける。
後ろ手にわたしの頭にぽんぽんと二回、掌が落とされる。
「はーい。」
振り返るとすでに、扉の影に白衣の背中が半分見えるだけだった。
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