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理科室は、純粋な薬品の匂いと静寂を取り戻す。
教師と生徒。
禁断の恋。
理科室で秘密の逢引。
自分がそんなチープでベタな設定に、身を置くことになるなんて。
ちょっと他人事みたいで笑える。
「・・・さむ……帰るか。」
軽く吐く息が白い。
両手を口元で温めながら出口に向かって足を踏み出した。
その時・・・。
カチャ・・・
ガラスがぶつかり合うような音。
音の出所を探るように、後ろを振り向く。
窓に沿って一番奥にある、茶色い扉。
『理科準備室』
白いプレートに文字が並んでいる。
そのドアの隙間が、キラリと光ったような気がした。
嘘…
ドア、開いてる?
普通、ああいう部屋は鍵がかかっているはずだ。
少しずつ扉に歩み寄る。
まさか、
誰か、
いる?
まさか…
見られた?
一歩ふみだすたびに、心臓が音をたてる。
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