Chapter.3

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「おはよー、栄口君」 「はよー水瀬」  一緒に桜を見たあの日から、俺と水瀬は親しくなっていた。元々同じクラスだし、席も隣では無いけど近いし、気が付けば結構話したりするようになってたからだろうな。 案外話す内容も合うし、音楽とかの好みも似てるのか、CDを借りたりもしている。あっそうだ。 「水瀬、この間言ってたグループのCDさ、姉貴が持ってたから聞く?」 「えっ、いいの?お姉さんのでしょ?」 「大丈夫、昨日許可貰ってるから。姉貴も布教だなんて言って喜んでたし」 「それなら、貸して?布教されちゃいますよっ!」  そう言って水瀬は笑った。親しくなって分かったのは、水瀬は本当によく笑う奴だってこと。それにニッコリってより、やわらかく笑う感じに近いかなぁ。見てるとこっちまで笑っちゃうんだよね。 「……で、何それ。ノロケか?」 「んな訳ないだろ。ただ友達の話をしてただけじゃんか」 「ふーん」  阿部は何か意味あり気にそう言うと、購買で買ったヤキソバパンを頬張った。こっちまでソースのいい香りがしてくる。部活帰りの買い食いは今日はヤキソバパンにしよう。  今日は1組ではなく7組に来てお昼を食べる。大勢で食べる方が美味しいし、気分変わるしね。巣山は飲み物を買いに行ってるから、今ここにいるのは阿部と水谷と花井と俺の4人。 「あのさー、水瀬って、郁ちゃんー?」 「何だ、クソレ知り合いか?」 「クソレって言わないでよー。郁ちゃんとは小中同じだったんだよー」  水谷が水瀬のことを『郁ちゃん』だなんて呼んだ時、一瞬胸がちくりと痛んだ。なんだろう、今日の弁当があたったのかな? やっぱり前日の内におかず弁当箱に詰めてたのが悪かったかな?別にいつも大丈夫だったんだけどなぁ。 .
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