Chapter.3

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「その水瀬ってどんな奴?」 「郁ちゃん?うーん、普通な子だよ。勉強も良すぎず悪すぎずだし、運動もまぁまぁかな。あっ、それと、笑うとめっちゃ可愛んだよねー」 あとねーとへらへら笑いながら続ける水谷に何故かムカついた。何故ムカついたか分からないけど、それと同時に俺は水谷に向かって怒鳴っていた。 「笑うと可愛い事くらい知ってるよ!!今どの曲が好きかも知ってるし、持久走で真ん中位だけど一生懸命走ってたのも、それから、それから」 「栄口、分かったから落ち着け」 花井のなだめる声と肩に置かれた手ではっと我に帰って周りを見てみると、クラス全体が驚いた顔をしながらこっちを見ている。俺一体何やってんだよ!!ど、どうしようか…… 「分かった分かった。けど栄口、そんなに小説にのめり込むなよ。なぁ、花井」 「えっ、お、おう。まぁ、俺は読んだことない話だからわかんねぇけどな」 一人心の中で焦っていると、助け船。多少…いやかなり無理やり過ぎる後付けだけど周りの人達は納得したのかもう気にしてはいなかった。気付いてないのは水谷だけで、「俺小説の話してたっけ?」なんて言いながらのほほんと笑ってる。これが長所であり、短所でもあるよな。 とりあえず、ほっとため息をついて前を見るとにやっと笑う阿部と目があった。ぎくり。なんて、嫌な予感ていうか寒気がする。 「で?栄口君はどうしたんだ?」 阿部は普段俺の事を栄口って呼んで君付けはしない。質問してる内容も気付いてるクセに…… 「阿部ってさ、ドSとか言われない?」 「栄口は鈍感だって言われねぇ?」 ちょっとした反撃もさらりと交わされて、逆に痛いとこをつかれた。 そうだよ、鈍感だったよ。自分の気持ち、今気付いたからね。水谷に張り合ったのも負けたく無かった嫉妬、朝練終わった後とか急いで教室に向かってたのは早く会いたかったから。うわぁ、振り返ってみると丸分かりじゃんか、俺。恥ずかしいのに、一つ気付くと連作していくようにアレもコレもと次々に思い出される。まるで恋の嵐とでも言うべきほどかも。 一つ息を吸って、全ての思いを吐き出そう。 「……俺、水瀬のこと、好きみたい」 これから毎日阿部とかにからかわれるのかと先が思いやられるけど、それ以上に水瀬への気持ちに胸がドキドキと高鳴っていた。 連作する、恋の嵐 <気付いたら、もう止められなかった><止める気もしなかったけど>
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