Chapter.1

2/4
前へ
/12ページ
次へ
 春。初めてこの校門をくぐってからもう一年が経つのかと思うと、少しだけ感傷深いものにかられる。  ちょっとだけぶかぶかな制服に身を包む新入生を見るのも。だって、制服をしっかりと着てたのは入学当時だけだったから、余計初々しさが思い出されるんだもん。  私も制服は買った。中学がセーラーだったから、憧れのブレザー。赤のリボンを買って、うきうきしながら着ていたものが、今は特別な行事の時だけのものに成り果ててる現状。だけど、とっても想い出の詰まったものだ。  桜の花びらが散る駐輪場を抜けて、私はグラウンドに向かう。私の彼、栄口勇人のいる野球部へと。  西浦の野球部は去年から軟式から硬式に変わったらしい。私にはゴムっぽい球から皮の球に変わったくらいの知識しかないんだけど。それ以外の違いってなんだろう。今度勇人に聞いてみよっと。  とりあえず、一年生ばかりの野球部は、最初はあまり注目を浴びてなかった。ただの新設された部活でしかなかったんだ。  それが、桐青っていう強豪に勝ってから周りの視線が変わった。今ではうちの学校の看板背負ってるくらい期待が大きな部になってる。今回の新入生には、野球部に入るが為にランクを落としたり、頑張って上げたりした子もいるらしいと皆が言ってた。  部員がマネジの千代ちゃんを含めて11人だったのが今では3、4倍はいるみたい。(あの美人なモモカン目当てで来た人もいたけど、それは現実を知り、金剛力を喰らって今では純粋な球児としてボールを追いかけている。不良の更正だ、なんて本人は笑ってたけどね)
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加