Chapter.1

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 校舎を抜けて、春の青空が広がるグラウンドに出る。近くのフェンスに近寄ると今はバッティング練習らしく、スイングの音や、ボールがヒットする金属音、打つ方向を狙う部員の声が響き渡る。  中には、そのバッティング練習に交えてキャッチの練習をさせて貰ってる子もいる。田島君なんかはお構い無しにあちこちに乱れ撃ちしているから大変そうだ。  のん気にそのまま練習風景を見てると、たまたま近くにいた1年生が私に気付き、大きな声で挨拶をしてきた。それに連鎖するかの様に他の部員も挨拶をしてくる。最初は戸惑ったけど、今はとても嬉しいことだ。ただ、手を止めてしまうのが申し訳ないんだけど。  モモカンも私に気付き、笑って見せる。それから周りを見渡して、ボールを回収して休憩してと指示をだした。 「いらっしゃい、郁ちゃん」 「こんにちは、お邪魔しちゃいました?」  そう尋ねればにっこり笑って、ちょうど休憩とらなくちゃって思ってたのと言って、長い綺麗な黒髪を翻して花井くんの所へ歩いて行った。  本当にモモカンは綺麗だなぁ~。私もおこぼれを預かりたいくらいだよ。頑張ってはいるけど、並の顔は並みでしかないから。 ……やっぱり、こんどコスメを新調してみよう。  なんて考えてると、片付けが終ったらしい勇人が近付いてきた。 「郁、いくら春で暖かくても、薄着だと風邪ひくよ」 「あっうん。大丈夫、ちょっと覗いたら帰ろうと思ってたから」  そう言って笑って見せると、ちょっとだけなって頭を撫でられた。 「明日は午後から空いてる?」 「空いてるけど、どうしたの?」 「明日、午前練習だけになったから何処か行かないかなぁって」 「ホントに!?うわぁ~、やったー」  喜ぶ私に、『確か見たい映画あるって言ってたよね』、なんてにっこり笑う勇人は一年前と変わらない優しさで側にいる。 .
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