Chapter.2

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黄昏時を過ぎて、ビロード色の空の下。コンビニの前で皆思い思いのモノを食べている。 時々部活が終わった勇人を待って一緒に帰るんだけど、その時野球部の皆とコンビニで買い食いをする事がもう習慣になってしまっていた。 皆お腹すくもんね、なんて思いながらさっき買った新発売のアイスを口に運ぶ。うん、美味しい。 「あっ、郁それ美味しい?」 「うん、スッゴク!!当たりだね!勇人も食べる??」 うんと返事をした勇人の口にアイスを運ぶ。パクっと食べた後ににっこり笑って本当に美味しいと言う勇人を見て、『でしょ?』、なんて言いながら笑い返した。 「いちゃつくなら他所でやれ。暑苦しい」 「阿部ひどーい。そんなんだと万年野球が恋人になるぞ!!」 離れたトコで巣山君達と喋ってた阿部からのツッコミがあったけど、特に恥じたことなんかしてないから謝らない。阿部には柔軟な心が足りないよねー。 そんなことを考えながら少し溶けかけたアイスを食べると、1年ズが近付いて来る。何だろうと思うと、 「何で先輩って付き合ったんスか??」 「えぇっ!!??」 「って、星ちゃんが言うてました」 「ぼっぼく!?」 ちーちゃんが勢い良く尋ねて来たと思ったら、勢い良く他人に責任を擦り付けた。いや、面白いやり取りだからいいんだけど。  そのやり取りに気が付いたのか、花井君の近くにさくらちゃんがウキウキした足取りでこちらに向かって来る。 「私も知りたーい!私付き合ってるとこしか知らないんですよね」 教えて下さいなんてにっこり笑うさくらちゃんは1年のマネジで去年の夏の大会の時に花井君に惚れたという一途な乙女で、こういう恋の話題が大好きな子なんだよなぁ。 うーん、きっかけなぁ。 「んー。入試の日に、私と勇人席が隣だったの。私が消しゴム忘れたのに気付いて困ってたら勇人が自分のを半分くれたんだ。それが切っ掛けでね、その後…」 「違うだろー」 話を続けようとすると隣で棒アイスをかじってた勇人からチョップがとんでくる。軽く、なんだけど頭を押さえながら抗議しておく。 「いたっ。チョップいたいよ」 「違う事話してるからでしょ。だいたいその設定は何??」 「昨日友達から借りて読んだ漫画の設定~。面白かった」 そう答えると勇人は、嘘を教えてるなよなんて言いながら阿部達の所へ向かっていった。 その後ろ姿を見送りながら、1年ズの質問攻めの答えをぼんやりと考えていた。 .
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