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仕事から帰ってきた私は、着替えもせずに母に電話をかけた。
「もしもし、優衣?」
「お母さん。久しぶりだね」
私から母に電話をかけたのは何年ぶりだろうか。
「お母さん、お母さんを一人残して、私だけ逃げ出してごめんね」
泣きそうになるのを必死でこらえる。
「何言ってるの?久しぶりに電話してきたかと思ったら。近いうちにまた寄りなさい。大村さん、だいぶ前に引っ越して居ないから。何も気にしなくていいのよ」
母は、私が泣きそうなことに気付いている気がした。
「うん…ありがとう。また今度行くね」
たった数分の電話。
こんなことさえできずにいた私は、なんて弱くて小さな人間だったんだろう。
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