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平和な関東の冬の朝。
ごく有り触れた日常がそれぞれの家庭で起きはじめるころ、彼も目を覚ました。
黒い髪に寝癖を付けて、眠気眼を擦る彼の名は『螺宮 龍治(にしみや りゅうじ)』
彼もまた、ごく有り触れた世界の住人の一人である。
「ふぁぁあ、ねみぃ~」
ボサボサの髪を乱暴に掻き乱しベッドから下りる。
そして自室のドアノブに手をかけたその時、
「おっはよー!りゅ・う・じー!」
声と共にドアが開く。
突然の事に対応出来ずドアの角に龍治の顔がヒットする。
そしてそのまま仰向けに倒れた。
「あれ?龍治、そんなところで寝てたら風邪引いちゃうよ?」
ドアを開けたのはくせっ毛のある黒髪の少女。
その張本人が悪びれもせず、ただただ不思議そうに見ていた。
「痛ってぇ。緋璃姉、毎朝毎朝言うけどさ、朝っぱらから人の部屋入ってくんなよ」
龍治はムクッと起き上がり、額を抑えて緋璃(あかり)と呼んだ少女に注意する。
「そんなの知りませーん。私は龍治のお姉ちゃんだから別に龍治の言うこと聞かなくてもいいんですーだ」
緋璃は頬を膨らませて拗ねた様に言う。
「どういう理屈だよ…ん?なんか焦げ臭い」
「あっ!いっけない、卵焼きの火止めて来てない!」
緋璃は慌てて下の階に下りて行った。
「はぁ…こう毎朝黒焦げの物食ってたらそのうちホントにがんになっちまうな」
龍治は肩を落として部屋を出た。
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