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龍治は家を駆け足で飛び出し、ゆっくり歩を緩めた。
「ふぅ、緋璃姉には悪いけどがんになるのは御免だからな」
龍治は少し申し訳なさそうに微笑んで言う。
「にしても朝があれだけだと腹減るな、コンビニでもよるか」
龍治は一人呟きながら歩き、ポケットをまさぐる。
だが、
「あれ?」
龍治は立ち止まり自分の体中を叩いてあるものを探す。だが見つからない。
「あちゃー、財布忘れた」
龍治は困り顔でため息を吐く。
「あ~あ、道端に五百円でいいから落ちてないかなぁ」
肩を落として歩き始める龍治。
すると、足元に光るものを見つけた。
「ん?なんだこりゃ」
龍治は屈んでそれを拾う。それは正真正銘の五百円玉だった。
「おっ、ラッキー!今日は緋璃姉のダークマターも食わずにすんだし、かなりツイてるな!」
ご機嫌に鼻歌を交えながら歩を進める。
しかし、突き当たりの角を右に曲がった時、龍治のささやかな幸運など消し飛んでしまった。
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