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龍治は鼻歌交じりに突き当たりを右に曲がった。
その瞬間、龍治の顔から血の気が引いた。
目の前に平伏す黒服の男。その男と同じ格好の男が更に4、5人が倒れていたりコンクリートの壁に減り込んだりしていた。
まさにプチ地獄絵図。
その中心に、真っ赤な少女が立っている。
真っ赤な髪を腰まで伸ばし、深紅のトレンチコートに身を包んだその少女は自分の足元に転がる男の頭を踏み付ける。
「ったく。下っ端風情が、一々私の手を患わせないでよね…ん?」
少女が不意に龍治を見た。二人の目が宙でぶつかる。
「…見たわね」
「み…見ちゃいましたね」
少女の問いに龍治は何故か丁寧語で答える。
「なら面倒だからさ」
少女は龍治に向き直る。
「…死んで」
少女はかったるそうな顔で言い、左手を龍治に翳す。
それと同時に少女の手より先から業炎が巻き起こり、龍治を飲み込まんと迫った。
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