28人が本棚に入れています
本棚に追加
矢吹君のおかげで、ため息の事を何も言われず授業が再開した。
私は緩む顔を必死に隠しながら、相変わらず横の窓を見つめる。
今度は、窓に僅かに映る伏せている矢吹君を。
・・・・早く話したいなぁ。
「~♪」
ゲ・・・。
よく耳にする着信音が鳴ると同時に、眉間にシワを作ったまま
携帯の主へ目をやる。
矢吹君をどこかに連れて行ってしまう、憎き携帯。
伏せながらポケットの中に手を入れてケータイを取り出す矢吹君。
ガタッ。
「あ~?・・・・今教室。
おー。行く。・・・・」
・・・やっぱり、行っちゃうんだ。
話しながら後ろのドアに向かう彼を
目で追う。
視線を感じたのか、ちらっと私を見た。
「・・・おー。」
電話の相手に対してか、私に対してか、わからない声をかけて、少し微笑んだように見えた。
「・・・矢吹~。」
と呆れたように言う先生の声を背に、教室から出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!