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矢吹君のおかげで、ため息の事を何も言われず授業が再開した。 私は緩む顔を必死に隠しながら、相変わらず横の窓を見つめる。 今度は、窓に僅かに映る伏せている矢吹君を。 ・・・・早く話したいなぁ。 「~♪」 ゲ・・・。 よく耳にする着信音が鳴ると同時に、眉間にシワを作ったまま 携帯の主へ目をやる。 矢吹君をどこかに連れて行ってしまう、憎き携帯。 伏せながらポケットの中に手を入れてケータイを取り出す矢吹君。 ガタッ。 「あ~?・・・・今教室。 おー。行く。・・・・」 ・・・やっぱり、行っちゃうんだ。 話しながら後ろのドアに向かう彼を 目で追う。 視線を感じたのか、ちらっと私を見た。 「・・・おー。」 電話の相手に対してか、私に対してか、わからない声をかけて、少し微笑んだように見えた。 「・・・矢吹~。」 と呆れたように言う先生の声を背に、教室から出て行った。
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