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児童保護施設の談話室に置かれたクリスマスツリーを飾り付けていた、赤毛のやんちゃそうな少年が溜息をついた。
「あ~あ。面倒臭えなあ。こんなもん飾ってもチビどもが喜ぶだけなのによお。」
「よく言うよ。昨年まで『クリスマスはご馳走にありつける最高の月』って言ってたクセに。」
やはり飾り付けをしていた、艶やかなプラチナブロンドの端正な面立ちの少女がそう言って、やたらと大人ぶってみせる少年に冷ややかな目線を送った。
「るせーっ!オレももうガキじゃねえってことだよ。」
語気も鼻息も荒くそう言って胸を張る少年に、少女は呆れた――というように肩をすくめ、苦笑した。そしてダンボール箱の中の大きな星を掴むと、少年の胸元めがけてポイッと放り投げた。
「はい。これ。てっぺんの星。」
不意をつかれた少年が、お手玉しつつ慌てて星をキャッチする。
「これ、飾りたくて一昨年、小さい子たちと取っ組み合いのケンカしたの誰よ?あの大ゲンカのお陰でツリーの飾り付け当番ができたんだったよねえ。今年は念願の当番なんじゃないの?」
少女に皮肉たっぷりに言われて少年は口を尖らせた。
「っせえなあ。あん時はオレもガキだったの!!いちいち昔のこと言われちゃ、やってらんねえよ、もう!」
「昔って…。一昨年のことじゃん…。」
「るせえよッ!」
「はいはい、すいませんでした。ま、面倒なのは私もおんなじだけどね。ほら。さっさとやっちゃおうよ。」
そう言ってオーナメントを飾りつけてゆく少女の、少し大人びた横顔を睨みながら、少年は心の底で毒づいた。
(なんだよ、クソ女っ!よりによってお前と一緒の当番だなんてサイテーだぜ!大体、お前は何かにつけて冷めすぎだっつうの!!)
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