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「いいじゃんか。幸せじゃなくったってさ。オレ、クリスマスは大事な人が幸せになってくれるようにお願いする日だと思うことにしてるんだ。」
少女は、言葉もなく少年を見つめる。
「あのクリスマスのイルミネーションも、もしかしたらさ、少しでも幸せな気分になってくれるといい――って願って誰かが飾ったかもしれないだろ?そう思うと、あの光も違って見えてくるように思うんだ。オレはさ。光の中にいない人のことを思うことにしてるんだ。」
「……。」
「ま、幸せにこしたこたぁないけどな。オレ、今年は……。」
少年は、そこで言葉を切った。
少女は次の言葉を待ったが、少年は何も言わなかった。
ただ黙って街を見つめるだけだった。
(今年はおまえが、ちょっとは楽しくやれるようになるといいなって、思うんだ。)
それからしばらくの間、二人は黙って窓の外の夜景を見つめていた。
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