1人が本棚に入れています
本棚に追加
不意に冷たい風が、窓から吹き込んでくる。
と、少年がハッとしたように窓から顔を出す。
「雪だ。雪だよ。めっずらしいな~。ホワイトクリスマスじゃん!」
少年が、おどけた声を出す。
この地方での12月の降雪は、滅多にないことだった。
「風花じゃないの?」
少女の言葉に、出窓から肩まで乗り出して空を見上げた少年が叫んだ。
「違うよ。降ってるんだ。これ、ちょっとは積もるんじゃねえかな?街のやつら、うかれてるぜ、きっと。」
少年は楽しそうに少女を振り返った。
少女も、つられるように微笑む。
「明日、街へ行かねえか?」
尋ねる少年は、いつもよりもずっと大人に見えた。
少女はためらうことなく頷くと、これまでにない、やさしい穏やかな微笑を、初めて少年に見せた。
屈託のない少年の笑顔を見つめながら、少女は思う。
自分にとって今日と言う日が、そして彼みたいな友だちを得たことが、これまで生きてきた中で一番の贈り物かも知れない――と。
最初のコメントを投稿しよう!