《前編》

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12月も半ばを過ぎた、ある風の強い夜だった。 「ただいま……」 私は家のドアを開け、 誰にというわけでもなくつぶやいた。 学生カバンを置いて電気をつけ、 「はぁ……」 ひとつため息をつく。 ……う、さむい。 家の中にはいったにもかかわらず、 はく息は相変わらず白かった。 私は家に上がってファンヒーターのスイッチをいれた。 ……さて、まずは夕食の準備しないと。 ……ガチャガチャ。 台所は静かすぎて食器を用意する音は、 やけに大きく聞こえた。
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