《前編》

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私は、米倉咲希。 高校に入ってもう9ヵ月になる。 家にだれもいないのは 今日に限ったことではなく、 両親は仕事で海外へ行ってるので1ヶ月前からずっとだ。 私が中学へあがった頃からはそれはいつものことで、 そのたびに私は1人で生活している。 ――「今回は長くなっちゃうけど、沙希ももう高校生だし、大丈夫よね」―― ――「いつも悪いな。……じゃあ、行ってくるから頼んだぞ」―― ……そう。 1人には慣れている。 だから何週間だって大丈夫。 私は寂しくなんてならない―――― 両親を見送るとき、 私は自分にそう言い聞かせていた。 でも、今まではせいぜい一週間程度だったからか、 小さな不安を隠しきれなかった。
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