【 夜明け前 】

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「朝陽(アサヒ)、どこに行くの?」 部屋に荷物を運んですぐ、再び玄関に戻った私に母が声を掛ける。 「海」 短く答えると、背後からは溜め息が漏らされた。 「着いたばかりなんだから、少しゆっくりしてからにしたら?」 「ここに来たら、まず最初に行きたいの。毎年同じこと言わせないで」 土の匂いがする。 私は自分のサンダルを引き寄せて、それに足をさし入れた。
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