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私は今、学校行事の一環として、林間学校に来ている。
季節は夏。
場所は、県境にある廃校になった小学校だ。
私の高校では、毎年、夏休みに、三泊四日の日程で林間学校へ行く。生徒全員ではないが、参加すれば補習を免除される為、一クラス分くらいの人数が参加していた。
場所は毎年、市の施設で行われる。
だが今年に限って、その施設の補修工事が入っており、仕方なく山奥のこの廃校で行う事になったのだ。その為、日程も変更になっている。
生徒達は学校に集合し、そこからバスで二時間程揺られる。景色がどんどん田舎のものになるに連れて、生徒達の間には落胆の声が多く聞こえてきていた。バスが山道に差し掛かった時には、余りの道の悪さに皆、辟易とし始める。
漸く目的地に到着した時には、口にする言葉といえば「お尻が痛い」とか「もう帰ろうよ」とかの文句ばかりだった。
そんな中、私はというと、バスで二時間程揺られるだけで、こんなに清々しい空気を感じられる場所があったという事実に驚いていた。
蝉は街中と変わらず鳴いているが、喧騒ではなく葉擦れの音が耳に心地好い。そして、木陰が涼しさを誘っている。
とはいえ、暑い事に変わりはない。
勿論、古い小学校に冷房等ある訳もなく、近くに自販機も見当たらない。一番近くのコンビニは山道と県道の交わる場所にあり、そこをバスで通ったのは、一時間近く前の事だった。
そんな場所での林間学校に、便利な暮らしに慣れた生徒達の口からは、文句しか出ないのも当然と言えば当然だろう。
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