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「じゃあ、行きましょうか」
田中先生に声をかけると、私は荷物を持って校舎へと歩き出した。
田中先生が慌てて追いかけてくるのを感じるが、待つつもりも一緒に並んで歩くつもりもない。私はとろくさい男が嫌いなのだ。
校庭を早足で歩き、校舎の生徒用の下駄箱のある入口に着く。その時になって漸く、田中先生が追いついた。
「み、宮崎先生、歩くの早いですね」
とか。
貴方が遅いだけでしょう。
下駄箱の入口には、スチール製の扉が付いていた。ドアノブを回して開くやつだ。
建て付けが悪いのか、少し引っ掛かる感じがあり、力を入れて引っ張る。
木造の校舎だという事を考えると、どう見てもこの扉は後付けだ。そういえば正門も門柱のみで、門扉は無かった。この校舎が建てられた頃には、こんな山奥という事もあり、外界と遮断する必要はなかったのだろう。
そんな事を考えながら中に入る。すると、向かい側にも同じ扉があるのが目に入った。校舎の向こうに遊具か何かがあり、その出入りの為にあるのだろう。
下駄箱の床には靴が散乱していた。何足かは下駄箱の中に入れてあるが、半数以上は床に脱ぎ散らかしている。
私は溜め息を吐きながら、散らかっている靴を下駄箱に入れ始めた。
この下駄箱は、正門から見て校舎の右端に位置していた。
校舎は横に長く、左側にも入口がある。
そこまでの間に教室があり、生徒達はそこで寝泊まりするのだ。
今頃は加藤先生に言われて、掃除をしている筈だ。とは言っても、ある程度の掃除は事前にしてくれてるのだから、軽い拭き掃除くらいで十分だろう。
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