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広く高いアメリカの空。飛行機のジェット音が遠くで鳴り響くここはNYの空港である。並んだ観葉植物にフロアーをとりどりのキャリーが滑っていく。
「カズヤ…!」
溢れ返るような人混みの中不意に響いた聞き慣れた声に一之瀬は振り返った。2番ゲートのベンチの前で大きく手を降っているのはマーク・クルーガーである。
彼は一之瀬を見つけるや否や全速力で駆け寄ったかと思うとキャリーを握ったままの彼に思い切り飛び付いた。
「カズヤ…会いたかった…!」
感極まって大きな声で言ったマークは一之瀬の身体にぎゅ、としがみつく。
ブロンドの髪がふわりと揺れてマークの白く透き通るような肌が彼の頬を掠めた。
「淋しかった
やっと会えた…」
自分に言い聞かせるかのように言ったマークの後頭部を撫でた一之瀬は俺もだよ、とその耳元に優しく囁いた。混みあった空港のど真ん中で一目を憚ることもなく抱き合っていた彼らをクスクスと笑う通行人の声が聞こえた。
瞬間自分の大胆過ぎる行動を恥じたのかマークは頬を染めて慌て一之瀬から離れた。少し離れたところでそんなふたりを見ていた土門とディランが呆れた顔をする。
「熱いなぁ! おふたりさん」
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