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フィディオの数メートル先キグルミの兎に戯れる子供たちの中に一際目立つ影が見える。薄茶色の艶やかな髪を持つ色白の少年は彼の想い人マーク・クルーガーである。
「マークがあれ貰ってきなよ」
指差した先には溢れ返る子供たちの波。風船の用途なんてそれこそ思い浮かんだりしないが頼まれたからには仕方がない。
「嫌だ……
恥ずかしいだろう」
顔をしかめて言ったマークは当然の如く乗り気ではない。彼の真面目な性格ではプライドが赦さなかった。
「えー マーク
俺に逆らうの?」
ぶっきらぼうに冷たくいい放つと華奢な肩がビクリと揺れる。畏れを帯びた瞳が 躊躇いがちに向けられた。
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