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「…ん、マークの匂いだ」
久しぶりに入ったマークの家は相変わらず広々として綺麗に片付けられていた。一之瀬は出されたブルーのスリッパを徐に足にかけるとガラス張りの扉を抜けてリビングへと向かう。
彼の言葉が気になったのか自分の腕に顔を埋めたまますんすんと匂いを嗅いでいるマークの頭を一之瀬は撫でるとワイン色の革のソファに座り込んだ。マークの母親の趣味だそうだが美しいアンティークの並べられたこの部屋は本当にお洒落である。
「カズヤ食べたいものある?」
「ん~マークにまかせるよ」
キッチンから響いた声に身体を起こして笑い掛けた一之瀬。
マークはひとりっ子ということもあり昔から料理を教え込まれていたのかその味の格別さとレパートリーの多さには肝を抜かれるほどである。甘いルックスさながら何事も器用にこなすマークは本当に魅力的だ。
手際よくフライパンを揺らすマーク。一之瀬がキッチンに来たことを悟ると伸ばした左手でコンロの火を止めた。
「もうすぐだ
待っていてくれ」
そう言って後ろを向いて冷蔵庫の扉に手を伸ばした時だった。
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