2.星待

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……………… 星を待っていた。 谷倉山の中腹。 八月の夜は僅かに肌寒く、柔らかい夜風が髪を揺らしていた。 周囲の森林は静寂に包まれ、慣れない浴衣の擦れる音だけが微かに広がり、消えていく。 繋いだ右手。 肩に伝わる温度。 ほつれた髪の毛が首元に当たって、少しこそばゆかった。
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