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「心配してくれてありがとうございます。では失礼しますね」
そう言うと彼女は隣のクラスの方に歩いて行った。
(か、可愛い。なんだあの子!? まるで光沢のある黒アゲハ蝶の様に可憐だ)
もうガチで見とれた。こんな気持ち生まれて初めてです。
「んっ? 智喜? 何ぼーっとしてるんだ?」
廊下で突っ立てる俺を見た俊哉は、俺の元まで近付いて来た。そして俺の隣に寄り視線の方向を確かめる。
俺は……その場で上の空になってしまった。勿論、俊哉が隣にいるのも気が付いていない。
「はは~ん。さては……あの子に惚れたな? 意外だな、あぁ言う知的で清純な子が好みなのか」
「なっ…! お前いつの間に居たんだよ! べ、別に好きとかじゃねぇって!」
勘の良い俊哉。無理も無い……トマトの様に顔を赤くして首を高速で振っても……バレバレなのだ。
「うわ! 超わかりやすっ! 顔真っ赤だし!」
「うるせっ! あぁそうだよ……好みだよ。仕方ないだろ!」
「開き直るのはやっ!」
彼女は一瞬こちらを振り向いて、不思議そうな表情を浮かべて教室に戻っていく。
チクショウ……もう少し眺めたかった。
「あぁ言う知的な感じが限定じゃ無いけど……あの子を見て全身に電気が走ったっつーか……」
「またまたぁ……照れんなよ! まぁ人それぞれだしな!」
トシは俺に肩を組んできてからかい始めた。隣でゲラゲラ笑うトシから離れようとしたその時。
"キーンコーンカーンコーン……"
気が付くと聞き慣れたメロディーが辺りに流れる。勿論周りには誰もいない。
「はははっ……チャイムがなっちゃいむ……やっちゃったな」
「あ゙あ!!!! しまった……走るぞ!」
俺達の遅刻が確定してしまった。ついてねぇよ全く。
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