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夢を見た。
内容は詳しく覚えていないが俺の名前を呼んでくる。
「―――!」
とても懐かしく……とても優しい声。俺はこの声を知っている。
あの時と一緒だ。俺の名前を愛しく呟く……大好きだった彼女の声……。
だが、二度目は無かった。気が付いたら俺は壁により掛かっている楽な姿勢になっている。
「目、覚めたか?」
「んっ……」
思考がまだ上手く回らない。目の前の仲間に起こされたが、脳は半分寝ていた。
どうやら俺は寝ていた様だ。最近疲れも溜まって、ゆっくり出来なかったからか。
なぜ、そんなに疲れが溜まるかと言うと……
それは、これから始まる盛大なショーの為なんだ。
「智喜、時間だぞ。お前の心の準備は出来ているか?」
「智喜くんが寝ちゃうなんて珍しいね。今までの疲れが出ちゃったかな?」
周りを見渡すと金髪の長身に、黒髪ショートの女の子が居る。お互いの恰好はV系とゴスロリ。
この2人と先程起こしてくれた奴は高校の同級生。
楽屋にはお茶とお菓子にお弁当がテーブルに並べており、御自由にどうぞ状態でした。
「いよいよ全国ツアーだなぁ! くぅー! めっちゃ燃えてきた!」
「やっぱり緊張しますね……胸がとても苦しいです」
俺の事を起こしてくれた茶髪はテンションがHIGHになっている。しかし、女の子は不安を隠せていない。
「大丈夫。ただ披露する場所が大きくなっただけさ。今まで通りにすれば花丸だよ。ほら智喜」
金髪は俺に向けてペットボトルのお茶を放り投げた。
「お、サンキュー」
俺は金髪からお茶を受け取りお茶を口に一口含む。口腔は潤いスイッチが切り替わる。
「ふぅ……行くか! 皆が待っている!」
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