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「君は聡明だ。常に周囲への警戒も怠らず、この後の事まで考えて戦っている」
しかし、と男は話を続ける。
「力を抜いていて私に勝てるのか?君なら気付いているだろう、本気を出さ無ければ負けると……」
男が言い終えると、二人の間に沈黙が訪れた。
しかしそれもつかの間、司が口を開ける。
「そうだな……確かにあんたが強敵だってのはさっきので解った。しかもあんた、まだ本気を出してないだろ?」
「やはり気付いていたか」
男はさして驚きもせず、平然とそう返した。
「まぁな。なぁ、俺だけ本気を出してあんたは力を抜くって酷く無いか?」
司の言葉は続くにつれて段々強くなっていく。
「俺はそんなので勝ったって少しも嬉しく何か無い!」
そして遂に司の怒りは爆発した。
「そうだな、私はとても失礼な事をしてしまった。すまない」
男はただ、素直に頭を下げた。
「では、私も本気でいこう!……全てを焼き尽くす業炎の力、我が身に宿れ――【炎魔神】〈イフリート〉!」
男が魔法を発動させると、髪の毛は真っ赤に燃え上がり、肌の色は浅黒く司から見ても解る程、熱を発していた。
「こちらの準備は出来たぞ……」
「あぁ、俺もいくぜ……【青龍 双水刃】〈セイリュウ ソウスイジン〉!」
魔法が発動すると、両手に小さなナイフが現れた。
司はそれらを順手に持つと新たな魔法を使う。
「【一ノ型 水拳】〈イチノカタ スイケン〉」
するとナイフの先から水が流れ、腕を覆っていく。
「行くぞ!」
二人はお互いを目掛け、同時に突進する。
刹那、二つの影が交わった。
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