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二日後、朝稽古を終えた土方が井戸で顔を洗っていると、足音が近付いて来た。
土方は気付かずに顔を洗い続ける。
すると、土方に近付いていた足音は土方の後ろで止まり、土方の背を勢い良く押した。
「えい!」
「っつ!うおっ!」
土方は突然の衝撃で井戸に落ちそうになるが、頑張って踏ん張り通したので落ちずに済んだ。
一歩間違えば冷たく深い井戸の底に落ち、悪戯では済まないだろう。
土方は振り返り、悪戯の犯人を睨む。
「総司ィ!危ねェじゃ…!」
土方は驚いた表情を浮かべる。
「お…おみつさん…?」
てっきり犯人が沖田だと思っていた土方は目を疑った。
「おはよ!暑いなら井戸で体を冷やしたら?きっと涼しくなるわよ?ね?」
そこには太陽のような眩しい程の笑顔を向けた女性が立っていた。
女性の名は沖田みつ。
土方が思いを寄せる女性だ。
「あのなァ、おみつさん。井戸に落ちたら、引き上げるの大変なんだからな。大体、今落ちたら凍えて死ぬぜ。」
「そんなことないわよ。勝っちゃんなら、きっと自分から飛び込むわ。」
そう思うでしょ?とみつは笑顔で言う。
土方は二回目の大きな溜め息を吐いた。
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