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「は?別に俺にだとは決まってねェだろうが。林太郎さんにでもあげるんじゃねェか。あの人寒がりだしよ。」
土方は無関心そうに言う。
林太郎とはみつと結婚し、沖田家の家督を継いだ沖田林太郎のことで、沖田の義兄に当たる人物だ。
「いーや!絶対に土方さんにだな!土方さんの好きな黒の襟巻きだった!」
「林太郎さんも好きなんじゃねェのか?」
「おみつさん、楽しそうに選んでたんだぜ。林太郎さんにならあんなに楽しそうな顔はしねェはずだ。」
不憫な林太郎だが原田の言葉には説得力があり、土方は納得してしまった。
そんな土方を見て原田はさらに囃し立てる。
「モテる男は辛いなァ。人妻だろうが土方さんには関係ねェってか?」
「うるせェ。俺ァ、別に…。」
否定する土方ではあるが、満更でもないようで心做しか顔を赤くしていた。
誰にも話したことはないが、土方はみつに心を寄せている。
夫が居ようが沖田の姉であろうが、土方は明るい性格のみつに惹かれていた。
(沖田家の良いとこは明るいとこだな。)
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