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「いくら勝っちゃんでも真冬の井戸には飛び込まねェよ。それに俺は勝っちゃんじゃねェし。」 「でも歳三、いつも勝っちゃんみたいになりたいって言ってるじゃない。」 「それは剣の話だろうが。」 同じことよ、とみつは頬を膨らませる。 土方はそんなみつの表情を見てプッと吹き出した。 「何よ。歳三。」 「いやァ?別にィ?」 土方は意地悪く笑う。 みつは何度も土方の頭を叩くが、土方は悪い悪いと笑いながら言うだけだ。 (頬を膨らませる顔、総司そっくりだぜ。流石は姉弟だな。) そうして、土方はまた笑う。 「そうだ。歳三も早く試衛館に入っちゃいなさいよ。勝っちゃんも総司も喜ぶから。」 「簡単に言わないでくれ。俺にも色々事情が…。」 「事情って何よ。いつまでも女の人誑し込んでないで夢中になれるもの見つけなさいよ。」 「別に誑し込んでねェし。暫く女居ねェよ。」 土方は髪をガシガシと掻く。 (俺は他の女なんざ見てねェっつうのによ。この人はまったく…人の気も知らねェで。) 土方の気持ちには微塵も気付かないみつは楽しそうに話し続ける。  
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