前編『カメラとクレイモア』

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加えて、アリスのスタッフは、社員、パート、派遣など。 総勢二千人近くにもなる。 そのスタッフが、書類を運んだりコピーへ走ったり。 荷物の搬入があったり、他の班への届けものがあったり。 かなり幅広く造られているアリスの廊下だが。 そんなスタッフ達で常に混雑している。 警護班によるペンタゴン内のメンテナンスも、警備を兼ねて、毎日行われている。 僕はその警護班と思われる青年に声をかけた。 彼が設置されている防犯カメラを見ながら、無線で誰かと話していたからだ。 渋めの深緑の上下に、土色のインナーという格好からも、彼がデスクワークとは無縁の班であることが伺えた。 僕より若干背は低いが、それでも180センチはあるだろう。 真っすぐに伸びた背筋や、程よく付いた四肢の筋肉のせいもあり、実際よりも大きく見えた。 更にインナーと上着の間に着ている防弾チョッキというか。 ポケットがやたら付いているベストのせいで、胸板がずっと厚く、たくましく写った。 褐色の肌はブロンズ像のように美しく、しっとりと艶を帯びていた。 腰までもありそうな漆黒の髪は、隙のないオールバック。 頭上で結び、後ろに長く垂らしていた。
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