筆がすべる

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サリ、サリ 騒音が入ってこない部屋は遮光カーテンのせいでいつも薄暗く、照明がないと全ての輪郭がなくなり曖昧に見える。 部屋の主人は青年で、白いワイシャツの袖を捲り剃刀を片手に足の毛を剃っていた。 剃刀に剃った毛がたまり切れ味が落ちる度に青年は横に置いた洗面器で毛を落としては、また足の毛を剃っていた。 そして剃る度に手の平で撫でて剃り具合を確かめた。青年の剃った所はどう撫でても手に当たるものはない。 片足を爪先から付け根まで綺麗に剃りおわると、青年は汚れを落とすために洗った。 その時だった。
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