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「圭一君はその紙に書いてある事を見てしまったんですか?」
圭一は迷った。ここで正直に見てしまったというのは簡単だ。だが今この状況で正直にいうのが正解であるとは思えなかった。ふと圭一は自分の手に先ほど自分を驚愕させた一文が書かれていた紙が握られている事に気付いた。
状況から見て言い逃れは出来ない。答えを出した圭一は慎重に言葉を選びながら話す。
「ああ、見てしまった。雛見沢の住民を根絶やしにするって……」
そこで圭一は一度言葉をきった。叶が何か行動に出るかもしれないと思ったから。
「その言葉は真実だよ。圭一君はそこに書かれている事をみて何を思ったのかな?」
「全部は見てないからわからない。ただ雛見沢の住民を根絶やしにするって所だけを見たんだ。正直何故こんな事をしようとするのかわからない。俺の勘違いならそう言って欲しい」
圭一は祈るような目で叶をみた。けれど叶は首を振った後、静かに言った。
「もう一度言うね。私達は雛見沢を滅ぼすつもりだよ。圭一君がなんと言おうとね。だから圭一君はここで見た事は忘れて今まで通り過ごしてほしい。もちろん怖いのなら雛見沢から引っ越しても構わない。どうかな圭一君?」
叶の言葉には有無を言わさない雰囲気があった。
言葉には出来ない何かの圧力が圭一にはひしひしと伝わっていた。
だけど叶の肯定の言葉を聞いた時から圭一の心の中で答えは決まっていた。
「俺は仲間を見捨てて逃げようなんて思わない。仲間に危険が迫ってるんなら俺は目を背けたりしない!」
「立派な言葉だね圭一君。でも圭一君がそう言うのなら叶は決断しなくちゃならない。それでもいいのかな?」
叶から放たれていた何かがさらに鋭くなり圭一に突き刺さる。
そこで圭一はその正体が何であるのかを感じとった。
――殺気だ。
叶からひしひしと伝わってくる雰囲気。それは殺気だった。
圭一はそれに気付いた時恐怖した。今までも死ぬ危険性のある出来事は確かにあった。山狗との戦いで死の危険性に遭遇していた。
だけどここまではっきりとした死の気配を感じた事はなかった。
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