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いつまで経ってもやってこない痛み。
圭一はゆっくりと目を開けた。
叶の視線は既に自分には向けられておらず後ろにいる青年に向けられていた。
「と……トシ君」
「彼は殺す必要はないよ。僕にまかせておいて」
知らぬ間に現れたトシと呼ばれた少年は叶の肩を何度か落ち着けるように叩いた。
「わかった。トシ君にまかせる」
叶はそう言って手に持っていたはずの剣を瞬時に消した。
圭一は叶に殺されなかったのはトシと呼ばれる少年のおかげだと知りながらも決して油断はしていなかった。
先ほどの会話を見る限り叶とトシが仲間であるのは明白だ。
つまり自分に何らかの危害が加えられるであろう事を圭一は確信していた。
トシがゆっくりと圭一に向かって歩いてきた。
圭一は逃げようとするも既に先ほどの恐怖で腰が抜けてしまっていて上手く立ち上がれない。
「まさかここに入ってくる事の出来る人がいるなんて思わなかったよ。あんなものをあそこに置いていたのは少し迂闊だったね。気付かせてくれてありがとう圭一君。さよなら圭一君」
トシの声が圭一の頭の中で何度も響き渡る。
圭一の視界に暗幕が降りていった……。
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