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シルファはシェイラの愚痴を気が済むまで聞いてやった後、落ち着いたのを見計らって、サクヤから受け取った手紙を開いた。
真っ白な封筒には差し出し人の名は無い。
便箋は一枚。
開けば、読みとるのがやっとのほどの下手くそな文字が並んでいる。
シルファはそれをどこか悲しげに、けれど微笑みながら、何度も読み返す。
― おねぃちゃんへ
げんきですか
ぼくはげんきだよ
のわるがぼくをいじめるから
ひっかいてやったよ
るゥすは またねてる
のえるが いつしょに
これかいてくれたよ
おねぃちゃん
ぼくだいじょぶだから
しんぱぃしないで
とぉる ―
短い手紙。
間違いもある。
それでも、愛しくてたまらない下手くそな文字。
あの山奥の屋敷で過ごした日々が、昨日のことのようによみがえってくる。
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