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一見して、廃墟のようでもある外観。
うっそうと生い茂る草木をかき分けて、重厚な扉を開けると、そこには案外綺麗なアンティーク調の家具の並ぶ広間。
そのソファに丸くなる黒猫と、待ちかまえていたかのように肩に飛び乗ってくる白猫。
そして、まるで寝起きの気だるい表情で、半螺旋の階段を下りてくるのは、銀髪に氷色の瞳をした魔道士。
それから…。
小さかった弟の姿。
少し我儘で、やんちゃで、でも無邪気で優しいところもあった。
父と同じ、濃いブラウンの髪は軽い癖っ毛で。
瞳は、自分と同じオリーブ色だった。
けれど・・・。
シルファが最後に会った弟のトールは、赤い瞳をしていた。
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