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「おい。」
心ここに在らず。
まさにそんな状態でふらふらと歩くシェイラを低い声が引き止める。
何気なく振り向くと、今一番見たくない顔が訝しげにこっちを睨んでいた。
「…なに?」
シェイラはあからさまに顔をしかめて、その長身の男を睨み返す。
「壁にぶつかる趣味でもあんのか?」
「は?」
意味がわからない。
「あと一歩で、激突するぞ?」
「・・・。」
言われて気づく。
目の前には閉じたままのドア。
どうやら、いつの間にか図書館にたどり着いていたようだ。
見れば、サクヤの手には分厚く古めかしいハードカバーの本が抱えられている。
「…アンタ、何してんの?」
「調べ物。」
「なにを?」
「なんでもいいだろ。」
「…そうね。どうでもいいわ。」
いつもの勢いで言い返す気力も無い。
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