風の行方

魔道士養成学校

「…ということから、魔法使用時の出力量は感情に左右される所が大きい。
よって、魔道士とは、常に冷静沈着であることが必須条件だ。」

教壇に立つのは６０代半ばを過ぎた厳つい顔の魔道士コーネル。

本人は、威厳を見せつけているつもりなのだろう。
でっぷりとした腹を強調するほどに背をそらせ、ゆったりとした歩調で生徒達の間を行ったり来たりしている。

「どんな状況にも動じず、常に最適な方法を選択し、瞬時に対応する。
それこそが、最も重要であり…。」

この、「魔道士たるは冷静であれ！」という旨の話は、この講師が講義の最中に用いる常套句である。

それは確かに正しく、尤もな論説ではあるが、生徒達は辟易している。

いわゆる、「耳にタコ」の状態だ。

その証拠に、教室内に居る30人ほどの生徒の大半は、その半分も聞いてはいない。
さすがに、こう何度も繰り返されれば、1度や2度訊き洩らした所で、すでにソラで言うことができる。