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春風
その風は、暖かで、柔らかで。
甘い、花の香りを運んでくる…。
「はっ…はっ…。」
「さあ、もうすぐよ。頑張って。」
夫は、額に汗を滲ませていきむ妻の手をぎゅっと握る。
「サリー…。」
「ん―――――っ!」
「出ましたよっ!もう力抜いてッ!」
産婆が明るい声でそう言った。
次の瞬間。
「んぎゃぁっ!ぉぎゃぁっ!」
ヒュォオッ!
産声とともに、風が渦巻いた。
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