赤いキャリーケース

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俺がそのキャリーケースを入手したのは、授業中に昼寝をするか授業をサボタージュするか部室にエスケープするか悩むくらいうららかな春の午後1時のことだった 結局サボタージュした俺は、さりとて行く当てもなくふらふらと街中をうろついていた と、ごみ捨て場に赤いキャリーケースが落ちていた 見た。拾った。帰った ……いや、勘違いしないで頂きたい。俺は普段からごみ漁りを日課にするような人間ではない ただ、余りにも暇だった。街といってもたかが地方都市。住み着いて数年も立てば近場の遊び場など一通り遊び尽くしてしまっている 知人友人でも誘えるなら話は別だろうが、生憎彼らは授業中。俺に付き合う余裕はない。こんな日いつもつるんでいる奴は、そもそも学校に来ておらず朝から連絡も取れなかった
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