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暇で暇で仕方がない。むしろ暇過ぎて死ねる
そう思っていた矢先に見つけたキャリーケースだ。やたらと攻撃的な赤色が気になって近づいてみれば、何と新品同然の代物である
取ってを掴み引っ張ってみるとゴロゴロと車輪が音を立てる。やたらと重量感に溢れていた。どうやら中に何か入っているようである
俺は辺りを見る。ごみ捨て場の周囲には、俺以外に誰もいない
だから魔が差した
そのときの俺にとってキャリーケースは宝箱で、素敵な何か――少なくとも暇を潰せる何かが入っているだろうと信じていたし、例え空っぽであったとしても話のネタぐらいにはなる
俺がキャリーケースをリユーズできるし、場所をとって邪魔なら質屋に入れてしまえばいい
何より若い時分しか馬鹿なことはできないのだからたまにはこういうのも悪くはない、という奇妙なその場のノリがあった
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