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ある日、君は僕の匂いに気付いて
「ごきげんよう」
と微笑んで去って行ったのだ。
それが飛び上がる程に嬉しかった僕は、毎日毎日、空を仰ぎ見て
君がやって来るのを待っていた。
「ごきげんよう」
『ごきげんよう』
「景気は如何?」
『ぼちぼち、だね』
「いい天気ね」
『ああ。素敵な気分さ。』
僕が返す度に嬉しそうにした彼女は、本を片手に僕の横へ腰掛けて
少し寄り掛かって読み出したんだ。
僕は落ち着きなく君の読む本を盗み見て、必死に暗記していた。
《彼女は金木犀が大好きであった。》
《そして金木犀もまた、彼女の事が大好きであった》
「貴方に名前をあげるわ。今日からクレバズゥよ」
『ありがとう。僕は幸せだ。ありがとう』
そして君は
その日以来来なくなったんだ。
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